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Vol.62
2024年4月17日
福島の環境再生の状況について理解を深めていただくことを目的に、環境再生プラザ登録専門家と学生の合同見学会を開催しました。快晴の3月22日、鳥取県と福島県から専門家2名と大学および専門学校で工学や医学を学ぶ学生6名が参加し、福島県浜通りの大熊町と双葉町を中心に、中間貯蔵施設、東日本大震災・原子力災害伝承館などを訪れました。
帰還困難区域にある中間貯蔵施設では、除染で取り除いた除去土壌の搬入と整備が進む一方、津波の被害を受けた公民館や水産種苗研究所、避難を余儀なくされた当時の状況そのままの小学校や施設などが点在しています。その一つの旧特別養護老人ホーム サンライトおおくまの敷地にある見晴台から土壌貯蔵施設の一区画を見ながら、この場所に多くの人々の暮らしがあったこと、これまでの整備の状況や全体で東京ドーム11杯分にもなる除去土壌の量などについて説明がなされました。
最終処分量の低減に向けて、除去土壌を再生利用した道路盛土の実証が進められている区画では、道路の路体に使う盛土や放射線を遮へいするための覆土などの構造、強度、安全性などについて説明を受けました。放射線量についてはモニタリングにより盛土工事の前後でほとんど変わらないことが確認されていますが、実際に道路の上を歩いて放射線測定器を使って空間線量を測り、参加者が自ら状況を確かめました。
続いて東日本大震災・原子力災害伝承館を訪れ、館内の展示を見学したあと、伝承館の研修プログラムの一環で語り部の話の聴講、フィールドワーク、ワークショップを行いました。
NPO法人富岡町3・11を語る会の宗像 涼さんからは、当時小学6年生で被災し避難した体験についてお聞きしました。同じ若い世代の話に、学生からは「震災時の状況を小学生の視点から聞けて良かった」「避難所生活のエピソードなど、リアルな当時の心情を知ることができた」「今まで知らなかったことを知ることができた」との声が聞かれました。
フィールドワークでは、海岸から近い場所にありながら全員の児童が無事に避難した浪江町の請戸小学校、津波の犠牲者の慰霊碑が建つ大平山霊園、2020年に再開したJR双葉駅前などを周りました。これらの場所は震災の爪痕が未だに残る一方、除染で放射線量が低減し、解除となった特定復興再生拠点区域もあり、地域の再生や人の帰還が進められています。
最後は1日を通して感じたことや考えたことを共有するワークショップで締めくくりました。スタッフを含め参加者全員でさまざまなキーワードを出してグループで話し合い、これからについて共に考えました。「福島の除染で出た土の現状について知ることができた」「残すべきもの、進めるべきことを考えさせられた」「地域間の温度差や隔たりをどうなくしていくか」といった話し合いがありました。初めて福島県を訪れた学生もいて、現地を自分の目で見たことでより身近なこととして捉えるきっかけになったようです。
参加した皆さんからは「テレビで見ていた景色を実際に見て、どれだけ大きな災害であったか実感した」「さまざまな意見を聞き、私たちが今後どのようにするべきかを考えた」「自分が見たことや感じたことを周りにも伝えていきたい」「福島以外での理解を深め、地域間の心理的な壁をなくす活動も必要だと思う」などの感想をいただきました。
環境再生プラザでは引き続き、放射線や環境再生の理解促進に取り組んでまいります。