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「除染とは、絵画のキャンバスに例えることができます。住民の皆様が主体となって復興という絵を描いていただくために、私たちは、できるだけ描きやすいキャンバスを用意しなければなりません」と荒井所長は、1年間の勤務経験から除染業務について話します。
「覚悟はしていましたが、やはり大変な仕事だと感じています」と胸の内を明かします。除染に対する考え方が、地域ごとで異なり、除染の同意に時間を要したことが理由です。実証実験等で確認された技術を用い、除染作業を進めましたが、住民の皆様の願いほどには下がらず、厳しい指摘を受けたこともあったそうです。「最善を尽くしたつもりですが、現実を受け止めました。住民の皆様の気持ちを思うと胸が苦しくもなりました」と振り返ります。
同支所が管轄する楢葉町、川内村の除染は今年3月に終了しました。昨年度、厳しい意見や指摘を受けていたある住民の方から「本当に放射線量が下がった。ありがとう」と感謝の言葉を頂戴しました。「数値を示すことで初めて私たちの業務の成果が理解される」と、改めて感じたそうです。
今後は、モニタリングやフォローアップ除染が主な事業になります。「これまで以上に住民の皆様の声に耳を傾けながら、復興に向け全力を尽くします」と意欲的に語ります。
支所に赴任して1年が過ぎた狩俣支所長は、除染業務の確かな歩みを感じています。「少しずつ光が見え始めてきました。多くの人たちが復興に向け前を向いて歩もうとする強い意志の表れだと思います」と話します。
同支所の管轄は南相馬市、浪江町の2つ。昨年の住民説明会などでは、住民の皆様から、さまざまな意見が上がり、厳しい現状を目の当たりにしました。しかし、最近は「自宅に帰りたいからきちんと除染をしてほしい。早く除染をしてほしい」という要望に変わってきました。「住民の皆様にも国や自治体など関係機関の取り組みをご理解頂けている証だと思います」と語ります。
去る5月16日には、浪江町酒田地区で原発事故後初となる田植えが行われました。これは、将来の営農再開に向けた実証栽培の一つとして、除染が終了した水田で、地元農家の方々により実施されました。「昨年度を『助走期間』だととらえると、今年度は『本格飛行』と位置付けています。2つの地区で着実に除染を進め、『浪江町の田植え』のように、住民の皆様に『希望が見えてきた』と感じていただけるよう取り組みます」と意欲をみせています。
農林水産省時代にはパキスタン、ベトナム、エチオピアに通算10年、勤務しました。「国や文化が異なっても理解できないことはありません。除染事業においても一生懸命、地域に対して努力すれば必ず通じると思っています」。強い信念を持って目標達成に向けて取組んでいます。