平成26年1月27日掲載
茨城県鹿嶋市について
鹿嶋市は、茨城県南東部に位置する人口約6万7千人規模の市。全国に約600社ある鹿島神社の総本社、鹿島神宮の門前町として栄えた市である。市の東側は、海岸や海水浴場を有する鹿島灘に面しており、全国的にも有名なハマグリやタコ、ヒラメなどの豊かな海産物が獲れる。また、鹿島港を中心とした鹿島臨海工業地帯は、鉄鋼業を中心に発展した工業都市であり、数多くの企業が拠点を構える。その他にも、関東で有数のサッカーが盛んな市としても知られ、Jリーグに加盟する鹿島アントラーズのホームタウンでもある。
2011年に発生した東日本大震災により津波や地盤沈下等深刻な被害を受けた鹿嶋市に、復興に向けた取組と除染の努力を聞いた。
子どもの安心・安全を最優先に夏休み期間中に除染を実施。
除染後もモニタリングを継続し積極的に情報を公開。
鹿嶋市では、国が行った航空機モニタリング調査の結果、平成23年11月時点での市内の空間線量率(平成23年8月測定データを換算)が、一部の区域で地表面から高さ1メートルで、毎時0.2〜0.5µSv*であることが報告された。その後、市は、走行サーベイにより、市内全域の道路上の空間線量率を測定した。その結果、国が実施した航空機モニタリング調査の結果から大幅に空間線量率が減少していることが確認された。一方で、子どもの安心・安全を考え、小学校や保育園を地上から50cmの高さで再度測定を行ったところ、鹿嶋市立大同東小学校の平均的な空間線量率が、毎時0.24µSvであったため、汚染状況重点調査地域の指定を受けこの施設の除染を実施した。
小学校の除染は、子どもの安心・安全を最優先に考え、夏休みの期間中である平成24年8月3日に鹿嶋市除染実施計画に基づき開始され、平成24年8月31日に措置が完了した。また、鹿嶋市は除染作業を実施するにあたり、まず、小学校の敷地を複数のエリアにわけ、エリア毎に空間線量率の測定を詳細に実施した。その測定結果に基づき、除染を実施する場所を決定し作業が効率的に進む方法を模索、さらに、天地返し等の方法を採用し、空間線量率の低減に加え除去土壌等の発生抑制にも努めた。
除染実施後の平均的な空間線量率は、毎時0.23μSvを下回っているが、市の教育委員会では定期的に測定を実施し、その結果を市のホームページ等で公表するなど、子どもが安心して学校生活を送れるよう、モニタリングを継続している。
*μSv…マイクロシーベルト
東日本大震災により甚大な被害を受けた鹿嶋市。
震災に学ぶ前向きな姿勢で復興および防災対策に取り組む。
鹿嶋市は、東日本大震災発生時、東京電力福島第一原子力発電所の事故の被害の他に、津波や地震等の自然災害による被害が深刻であった地域である。地震直後に発生した大津波により、鹿島港とその周辺地域の沿岸部は大きな被害を受けた。また、地震の激しい揺れが、地滑りや液状化現象を誘発し、3,100棟を超える建物や道路・鉄道・港湾等に甚大な被害をもたらした。このような状況を受け、市は、平成23年度から平成25年度の3カ年を計画期間とする「震災復興計画」を迅速に策定し、復興に向け一丸となり計画の実施に動いた。計画は、道路や海岸等の市民の生活や経済基盤の復旧対策をはじめ、被災者の心身ケアや健康管理、放射性物質対策等、多岐にわたる。放射性物質対策等においては、除染の実施の他に、放射線に関する正しい知識を得る機会を提供するため、茨城大学 理学部 田内 広教授を講師に招き、市民を対象とした放射線に関する講演会を二度開催した。講演会での質疑応答は、市のホームページに掲載し積極的に情報を公開、放射線およびその対策について市民の意識を高めた。
また、本計画には、「災害に強いまちづくり」を目的に、地域防災計画の策定や津波対策等、東日本大震災から学びその経験や教訓を今後のまちづくりに生かそうとする前向きな項目も含まれている。「災害に強いまちづくり」のプランには、災害時に相互協力が可能となるよう他自治体との相互支援ネットワークの締結推進が明記されており、これに基づき、佐賀県鳥栖市、和歌山県海南市、青森県五所川原市の三つの自治体と協定を締結している。
東日本大震災を風化させないために。
青森県五所川原市との復興に向けた文化交流と相互協力の誓い。
協定を締結している自治体の一つである青森県五所川原市では、毎年8月4日から8月8日に五所川原立佞武多(ごしょがわらたちねぷた)祭りが開催される。五所川原立佞武多祭りは、「青森のねぶた」と「弘前ねぷた」と並ぶ青森三大佞武多の一つで、高さが最大で20mを超える山車を運行する壮大な火祭りである。五所川原市では、鹿嶋市の鹿島神宮に祀られる神「武甕槌大神(たけみかづちのおおかみ)」をモチーフに立佞武多「“復興祈願”鹿嶋大明神と地震鯰」を制作した。「武甕槌大神」が祀られている鹿島神宮の奥の森には、地震を鎮めるとされる「要石」があることから、昔から地震抑えの神として祀られている。また、日本列島の地下には、大鯰(おおなまず)が潜みこの鯰が暴れることで地震が起こるものとされており、この立佞武多は、地震抑えの神である「武甕槌大神」が、「要石」で鯰=地震を抑え込む場面を表現されたものである。一日も早い被災地の復興と、東日本大震災を風化させないこと、また、このような大災害が今後発生しないことを祈願し、平成24年の五所川原立佞武多で披露された。高さ約23m、重さ約19トンのこの立佞武多は、祭りの後も五所川原市の立佞武多の館に展示されている。また、縮小サイズの「“復興祈願”鹿嶋大明神と地震鯰」が五所川原市から鹿嶋市に寄贈され、市内各所で展示されている。
東日本大震災と立佞武多を通じた交流により、両市は、相互理解と絆を深め、幅広い交流と協力の思いを強くした。
祭りを通し再生と平安への思いを一つに。
12年に一度の鹿島神宮御船祭が平成26年に行われる。
復興が進み新たなまちづくりに取り組む鹿嶋市では、平成26年9月1日より3日間にわたり、12年に一度開催される、御船祭(みふねさい)が執り行われる。この祭りは、鹿島神宮の祭神である「武甕槌大神」と、千葉県香取市にある香取神宮の祭神である「経津主大神(ふつぬしのおおかみ)」の二武神が水上で再会するというストーリーを題目にした水上祭である。水上の御船祭としては国内最大の規模と華麗さを誇り、その平安絵巻さながらの光景に魅了され、市内外から多く人々が見物に訪れる。
この御船祭は、本来、海上安全・豊漁を祈願する祭りであるが、平成26年に行われる祭りでは、東日本大震災の復興を中心とする日本再生への祈願も神事とすべく、鹿島神宮にて準備が進められている。また、同神宮では、毎年3月9日に行われる祭頭祭(さいとうさい)の開催も控える。祭頭祭は、年間80回を数える鹿島神宮の年間行事の中でも最も規模が大きく、春の到来を告げ、五穀豊穣・天下泰平を願う祈年祭である。
「歴史ある祭りを楽しみながら、多くの来場者とともに東日本大震災からの再生と復興への思いを一つにする機会となれば」、と鹿嶋市の担当者は語る。
関連情報
レポート一覧
- 平成29年12月12日掲載 茨城県つくばみらい市のレポート
- 平成29年11月14日掲載 茨城県常総市のレポート
- 平成29年6月15日掲載 茨城県牛久市のレポート
- 平成29年5月2日掲載 茨城県土浦市のレポート
- 平成29年4月27日掲載 茨城県取手市のレポート
- 平成28年6月30日掲載 茨城県龍ケ崎市のレポート
- 平成27年9月17日掲載 茨城県阿見町のレポート
- 平成27年6月12日掲載 茨城県利根町のレポート
- 平成27年3月31日掲載 茨城県高萩市のレポート
- 平成27年1月29日掲載 茨城県北茨城市のレポート
- 平成26年7月3日掲載 茨城県東海村のレポート
- 平成26年6月4日掲載 茨城県日立市のレポート
- 平成26年3月28日掲載 茨城県つくば市のレポート
- 平成26年3月26日掲載 茨城県美浦村のレポート
- 平成26年2月10日掲載 茨城県常陸太田市のレポート
- 平成26年2月10日掲載 茨城県ひたちなか市のレポート
- 平成26年1月27日掲載 茨城県鹿嶋市のレポート
- 平成26年1月27日掲載 茨城県稲敷市のレポート