平成29年11月14日掲載
茨城県常総市について
茨城県南西部に位置する常総市には、ほぼ中央に一級河川の鬼怒川が流れる。その他にも小貝川などの河川もあるおかげで、沿岸には肥沃な土壌が形成され、それを生かした農業や水運などの産業を背景に発展してきた。
東部には広大な水田地帯が広がり、西部の丘陵地には冬はコハクチョウやカモ類が越冬地として利用するなど、自然環境に恵まれている。
一方、たいへん交通至便な立地でもある。市内を南北に走る関東鉄道常総線のほか、JRやつくばエクスプレス線との接続もよく、都心へのアクセスも抜群。自動車網も充実し、平成29年の圏央道常総IC開通により、都心を経由せずに東名高速・中央道に直結するなど、従来以上に広範な地域とのアクセスが容易になった。
市独自の基準で子どもの生活環境を守る
常総市では、平成23年8月に行われた国による航空機モニタリング調査の結果、空間放射線量率が毎時0.23µSv*を超える区域はなかった。しかし、市独自の調査を行った結果、市内の一部の地域で毎時0.23µSv*を超える施設が見つかったため、優先的に子どもの生活空間、子供が多く利用する施設において除染等の措置を講じてきた。
* µSv…マイクロシーベルト
放射線・放射性物質に関して迅速かつ一元的な対応を図るため、平成23年10月に「放射能対策課」を発足し、翌年3月には市独自の施策を盛り込んだ「除染実施計画」を策定した。
実施計画では、0.23µSvを下回る施設に対しても市独自の基準値を設定。地上1メートル(子どもの生活環境に関する施設は地上50センチ)における空間線量率が毎時0.19 µSvを超える場合には除染を実施するとした。
計画に基づく除染を実施したのは、主に市内南部に位置する保育所・幼稚園3施設、小学校2施設、公園5施設。子どもが多く利用する施設については平成24年度中に除染を終えた。その後、子どもの生活空間のモニタリングで確認されたホットスポットの除染についても、平成25年度中に除染を完了させた。
継続的な計測で市民に安心を提供
国による航空機モニタリング調査で毎時0.23µSvを超える区域がなかったとはいえ、住民の不安解消を図るために、市ではさまざまな施策を講じてきた。
例えば、平成23年6月には筑波大学の松本宏教授を講師に招き、放射線をわかりやすく伝える講演を実施した。
身近な場所の放射線量を把握したいというニーズに対しては、放射線測定器をマニュアルとともに貸し出している。局所的にほかより高い線量が見つかった場合は、職員が除染作業の説明を行い、作業に必要な土のう袋を配布している。いずれも現在も継続中だ。
関心の高い食の安全・安心については、保育所・幼稚園・小中学校の給食で使用する食材の放射能測定を平成23年11月から実施している。現在も、小中学校及び、保育所・幼稚園において、測定を継続し、万一「ND(不検出)」以外の結果が出た場合には、速やかに献立を変更して対応するという徹底ぶりだ。
なお、市内で生産される農畜産物に出荷規制はなかったが、家庭菜園などで栽培している農作物については、希望者への測定を現在も続け、測定結果をホームページで公表している。
また、健康不安の軽減を図るため、震災発生時に高校生以下だった子どもを対象とした甲状腺エコー検査費用の一部助成を続けている。平成25年4月の開始以来、28年度末時点で延べ200人以上の受診があった。
こうした対策を講じた結果、事故当初に聞かれたような不安の声は年々少なくなっている。除染実施計画に基づく措置完了後も、住民のさらなる安心を確保するため、市域全域の空間線量率の測定や、市内85カ所の定点測定を続け、市のホームページで公開している。
徳川家の繁栄を今に伝える千姫まつり
豊かな自然環境ばかりでなく、常総市は歴史的な資産にも恵まれている。
市内にある弘経寺(ぐぎょうじ)は、徳川家康の孫娘である「千姫」のお墓のある寺として知られる。市ではマスコットキャラクターを「千姫ちゃま」と定めるなど、千姫にあやかった観光戦略を展開している。
千姫の誕生日が4月11日であるため、平成13年から毎年4月の中旬に「水海道千姫まつり」を開催している。住民から選ばれた観光大使「千姫さま」を中心に、女性主体の御一行が会場内を練り歩く「千姫さま常総ご回遊」をはじめ、趣向を凝らした趣向で、毎年多くの人で賑わいを見せる一大イベントとなっている。
数々の映画やドラマに生きる常総の町並み
歴史的な資産も生かしたユニークな取り組みとしては、「常総フィルムコミッション(常総FC)」がある。映画やテレビドラマ、コマーシャルフィルムなどのロケーションを誘致するものだ。市の知名度アップと地域観光などの訪問客の増加や地域活性化を図るため、平成14年6月に「水海道フィルムコミッション連絡会」として設立された。
現在は、経済環境部商工観光課の中にフィルムコミッション推進室を置き、ロケに関する相談から撮影当日の宿泊・飲食の紹介、エキストラの手配など、あらゆる角度から撮影をバックアップしている。
設立以来、実に1350本(平成29年9月現在)もの作品が常総市を舞台に撮影されてきた。多い年には延べ250日以上の撮影が行われ、地域活性化に向けた期待が持てるほか、経済効果としての貢献も大きい。
江戸時代から続いた豪農の屋敷「坂野家住宅」などを生かし、NHK大河ドラマをはじめとした時代劇の舞台として使われることも多い。一方、スポーツ施設である「青少年の家」や、シルバー人材センター事務所「ふれあい館」などの公共施設も好んで使われ、現代劇やコマーシャルまで、ジャンルを問わず、さまざまな撮影に対応できるのが常総FCの強みだ。
除染措置を終えた常総市では、こうした特徴ある取り組みも生かしながら、将来都市像に掲げる「健やかに ひとを育み みどり豊かなまちづくり じょうそう」を目指した施策を進めていく。
関連情報
レポート一覧
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