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No.4
インタビュー:2020年8月 浪江町
岡 洋子(おか ようこ)さん
O CAFE(オ カフェ)店主
浪江まち物語つたえ隊
浪江町のこと、震災からのことを紙芝居で伝える「浪江まち物語つたえ隊」で活動中。浪江町の自宅は震災後、解体することとなったが自宅倉庫を「O CAFE」へと改修。浪江町で様々な方々が“ただいま”と帰れる場所づくりに取組む。
O CAFEができて2年、この場所を作ってよかったです。人が集って、ほっとできるような居場所にしたいと思って、これまできました。ご近所だけでなく県外も含めていろんな人たちと話をしたり、紙芝居を上演したり。一度だけでなく何度も訪ねてきてくれる人も多いです。
草木染め
紙芝居パンフレットを前に
いまは、草木染めに取り組んでいて、関心がある人たちが集まってワークショップなどができるといいなと思っています。染料として使う藍やドライフラワーに使うミモザなど、O CAFE農園で栽培をはじめました。こうした植物を摘んだりなど体験もできるようにしていきたいです。
O CAFEに隣接する農園
農園で栽培しているミモザ
遠景は阿武隈山地
紙芝居は、「浪江まち物語つたえ隊」のスタッフとこれからもずっと活動していくつもりです。震災に関するものだけでなく、昔話など合わせて38種類あり、古里の記憶を風化させたくないです。娘が上演者になっていて、2人で老人会に出向き上演したときに、戦争経験者の方々にとても共感していただき、改めてやっててよかったと感じています。原発事故や津波のことと同時に、命や穏やかな日常生活の大切さを伝えていければと強く思います。
ご主人の高志さんより
昨年から田んぼを再開しました。近所の人たちと協力して、「苅宿ふれあいファーム」という地域ぐるみで営農管理ができる団体を作って米づくりをしています。
昨年、1町歩栽培したコシヒカリは食味が特Aでした。今年は3町歩ほどに広げ、5年後には30町歩を目指しています。
環境再生レポートでも「苅宿ふれあいファーム」についてご紹介しています。 環境再生レポートを見る
苅宿の自宅には、避難開始後1ヶ月くらいして初めて戻りました。その後も片付けには帰っていましたが、次第に獣害がひどくなり、ついに解体しようかという話になりました。そうしたら最初、娘二人は「目印が無くなってしまう」といって反対したのです。
それでも最終的に母屋は解体を決断しましたが、かわりに倉庫だった小さな平屋を改築して、寝泊まりできるようにすることにしました。浪江に住むことはできなくても、お墓参りで帰って来たときなど、やはり家族の居場所が欲しいですから。すると、コーヒー好きの娘が、ここを皆が集えるカフェのようにしたらどうか、というアイデアを出してくれたんです。そうして出来あがったのがこの「O CAFE」という場所。2018年5月に完成しました。
いまのところ飲食店として商売しているわけではないので、「営業日」は決まっていませんが、私たちがいるときは、いつでも気軽に立ち寄っていただければ、コーヒーやお茶でおもてなししています。町民の方も外から町に来る方も、とにかく皆がここに集まって一息ついて、笑顔になるのを見るのがいちばん楽しい。無理をせず、浪江町のふるさとカフェとして続けていけたらと思っています。
岡さんの紙芝居の語りが素晴らしく、震災当時の限界を超えた厳しい状況に想いを馳せました。本やテレビではかなわない、生で演じられる物語の力を感じました。一言一言が途方もない重みを感じました。
O CAFEにかける期待を知って、故郷にかける情熱だと感じ、いつまでも残してほしいと思いました。2つの紙芝居も実際に体験された話なので、後世に伝えていって欲しいと強く思いました。
元の住まいには帰れない状況ながら、Cafeという形で自らと家族の拠り所を築き、それをとても自然な形で地域の活力にも繋げられている様子に感銘を受けました。また、訪ねてみたいと思いました。
住所:福島県双葉郡浪江町刈宿字宮下120
電話:090-3644-4269(不定期営業のため、要問合せ・要予約)