平成25年8月1日
報道事案に関する環境省の見解
1 調査の内容
平成25年7月12日付の新聞報道を受けて、日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)が南相馬市で平成23年12月~平成24年2月に実施した除染モデル実証事業において
1. | 除染作業の前に、地元に対して、除染作業で使用した水の処理方法が説明されていなかった。 |
2. | 除染作業で使用した水が、回収されなかった。 |
3. | 放流された水の中には、放射性物質に関する基準値を超えていたものがあった。 |
4. | 水は、農業用水に使う川に放流され、農業用水を経由して農地を汚染した。 |
について調査を行った。
2 関係者からの報告及び聴取内容
ア)原子力機構
平成25年7月19日に原子力機構から受理した報告書及び聴取内容によれば、上記の点について、それぞれ、以下のとおりとしている。
1. | 除染作業の前に、地元自治体(南相馬市の除染担当部局)に対して、除染作業で使用した水の処理方法について説明した。一方、除染エリア近傍の小高川の河川管理者(福島県河川計画課)及び請戸川土地改良区、南相馬市小高区産業建設課へは、取水に関する手続きとそれに関する必要な協議を行ったが、排水に関しての協議は行わなかった。 |
2. | 除染作業で使用した水は、側溝のある場所では、側溝内に土嚢を設けて堰を作りポンプにより水を回収することとし、水が染み込んだ土壌は表面を除去する計画としていた(資料1)。計画どおり、全て道路側溝や枡に堰を設置して回収又は土壌表面の除去をした。 |
3. | 回収された水は約610トンであり、放流前には全て処理を行った(約89トンは薬剤処理を実施、残りの約520トンは凝集沈殿や自然沈降の処理を実施)。放流前には、全ての水について放射性セシウム濃度を調べ、あらかじめ定めていた放流時の自主的な管理基準値(当時の飲料水中の放射性セシウムの暫定規制値である200Bq/kg)未満であることを確認した。 |
4. | 3. の確認をした水は、除染エリアの道路側溝を経由して、飯崎川に放流された。 |
イ)日本国土開発(株)
平成25年7月17日に日本国土開発(株)(原子力機構から委託を受けた実際に除染作業を行った者)が公表した資料によれば、上記の点について、それぞれ、以下のとおりとしている。
2. | 除染作業で使用した水は、側溝のある場所では、側溝内にて土嚢により堰を作り回収する計画としていたため、計画どおり、道路側溝や枡に堰を設置して全て回収した。 |
3. | 回収された水について、放流前には全て処理を行った。放流前には、全ての水について放射性セシウム濃度を調べ、あらかじめ定めていた放流時の自主的な管理基準値(当時の飲料水中の放射性セシウムの暫定規制値である200Bq/kg)未満であることを確認したうえで放流した。 |
ウ)南相馬市
1〜3. | 除染作業の前に、原子力機構及び除染事業者から、除染後の回収水は放流時の基準を満たしていることを確認し、流末水路に放流すること、及び放流時の基準を満たさないものは、水処理装置で処理を行い放流する、との説明を受けた。 |
4. | 除染作業を実施していた平成23年12月から平成24年2月までの間、飯崎川から水田へ水は供給していない。 |
3 環境省の見解
ア)調査内容
環境省は、原子力機構、日本国土開発(株)及び南相馬市から、報告書の提出や事実関係の聴取をするとともに、作業日報、現場写真、測定記録等の現場記録を確認した。
イ)調査結果
1. | 原子力機構及び南相馬市への聴取によれば、除染作業の前に、南相馬市除染担当部局に対して水処理及び排水について説明を行ったことは確認された。一方、取水の関係者である福島県河川計画課、請戸川土地改良区、南相馬市小高区産業建設課については、取水に関する協議のみ行ったことを改めて原子力機構に確認した。 |
2. | 原子力機構及び日本国土開発への聴取、作業日報及び作業時の現場写真によれば、側溝のある場所については、側溝内に土嚢を設けて堰を作り、ポンプにより水を回収していたことが認められる (資料2)。また、水が染み込んだ土壌の表面を除去した一例として、塀の洗浄を実施(1月15日又は16日。資料3、4)した際に飛散した水が染み込んだ土壌について、その後剥ぎ取りを実施(2月1日及び2日。資料5、6、7)したことが確認された。 |
3. | 原子力機構及び日本国土開発への聴取及び水の測定記録によれば、回収された全ての水について、放流前にイオンリアクション処理、凝集沈殿処理又は自然沈降のいずれかの処理がされたことが確認された(資料8、9)。なお、処理後の沈殿物については、作業時の現場写真によれば、消石灰を加えて固化し回収されたことが確認された(資料9)。 原子力機構及び日本国土開発への聴取及び水の測定記録によれば、処理した全ての水について、放流前に放射性セシウムの濃度を測定しており、200Bq/kg未満であることが確認された(資料8、10)。 |
4. | 200Bq/Kg未満であることを確認し放流された水が流れ込む飯崎川は、周辺が水田地帯であるが、本事業が行われた時期に当該地域は稲の作付制限がなされており、南相馬市は、当該期間に飯崎川から水田に水を供給したことはなかったとしていることから、放流された水が農業用水を経由して農地を汚染したとは認められない(資料11、12)。 |
ウ)環境省の見解
原子力機構、日本国土開発及び南相馬市への調査を踏まえれば、1. に関しては、除染方法や排水処理についてまだ十分に知られていなかった当時としては、関係者への説明を更に丁寧に行う必要があったと考える。他方、2. から 4. までに関しては、今回関係者から頂いた報告や聴取した結果及び作業日報等の現場記録を確認する限り、認められなかった。
資料
- 資料1 警戒区域、計画的避難区域等における除染モデル実証事業(南相馬市・第2版)
- 資料2 除染水の回収状況(写真)
- 資料3 南相馬市地区 進捗図(南-2 1月15、16日)
- 資料4 協力業者の安全ミーティング日報(南-2 1月15、16日)
- 資料5 未舗装(砕石)道路の除染前後の写真
- 資料6 南相馬市地区 進捗図(南-2 2月1、2日)
- 資料7 協力業者の安全ミーティング日報(南-2 2月1、2日)
- 資料8 放射能濃度の測定記録(Ge半導体検出器、NaI(TI)スペクトロメーター)
- 資料9 放流した貯水槽の容量等
- 資料10 回収水・処理水のサンプリング・放射能濃度測定器(写真)
- 資料11 「南相馬市における内閣府除染モデル実証に係る報道」に関するヒアリングについて(回答)
- 資料12 原子力発電所事故における南相馬市の状況について