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No.15
インタビュー:2020年11月 浪江町
川村 博(かわむら ひろし)さん
清水 裕香里(しみず ゆかり)さん
特定非営利活動法人 Jin
震災前より、浪江町で野菜の栽培、デイサービスセンターの運営を行う。
避難指示解除前から花卉栽培に取組み、現在ではその品質から市場で高値で取引されるブランドに。住んでいる人が、生きがいのある地域作りに取組む。
避難指示が解除されて戻ってから、これまで地域密着型のデイサービスと花卉を主とした農業で事業を進めてきました。
花卉栽培は浪江が解除されてから町内で最初に取組みました。今では町内で7件に増え、浪江の花として人気があります。トルコギキョウ、ストック、カラー、キンギョソウ、マリーゴールド、カンパニュラなどで、他にもいろいろと作っています。これまで研修生を受け入れて、若者がUターンして独立、リタイアした後でご夫婦で花を栽培するようになった方々もいます。
今年はコロナの影響で5月あたりまで出荷が減少してしまいましたが、お盆の時期を含む夏には、海外からの輸入が少なかったこともあって花の種類によっては高値がついたものがありました。こうした社会状況ですが、再来年には10年に1度の「花のオリンピック」がオランダで開催されるので、最高品質の花を栽培して参加したいです。また、耕作放棄地が目立つので、農地を様々な花や野菜の栽培でキャンバスのようにして次の世代に引き継ぎたいですね。
栽培されたカラー
デイサービスの施設と花を栽培するビニールハウス、農地では大根が栽培されていた
栽培中のトルコギキョウ
代表の清水さんと設立者の川村さん
これまでの活動経験から2つ使命があると感じています。一つは福祉分野に関して、サービスを提供する/されるとの関係ではなく、いろんな形がありますが誰かの役に立っている、ここに来てよかった、と感じられるようなるような、そんな価値観の創造です。たとえばデイサービスでは従来のような室内での作業ではなく、畑で種まきをしたり、これからは干し柿を作ったりといった体を動かせて、やりがいが見いだせるような活動をしています。もう一つは地域に人をよぶことで、これまで取り組んできている花作りはその手段の一つです。
浪江はまだまだ人が戻っていませんが、事業を通して地域作りや復興に貢献できればと思っています。そのためには、職業として人が働ける状況を作っていくことが必要で、例えばシングルマザーの職業として農業で、生活と子育てを両立してやっていけるような、そんなふうにしていきたいですね。
浪江町で、障害者や高齢者の方たちとともに、農業を通じてご縁を広げています。
避難生活の時間が経つにつれ、あれほど戻りたがっていた高齢者から「浪江町には戻らない。戻れない」という声が聞かれるようになってしまいました。しかし、どちらが正しいかではなく、それはそれでいいと思っています。
新たな地域で暮らし始めた人たちも交えて、「支え合いづくり」「地域づくり」をしていきながら、20年後、30年後「高齢者や障害者が浪江町の復興を担った」と誇りをもって言えるように生きていきたいと思っています。
全ての取組みが地域に必要だと思うことを一つ一つ積み重ねた結果だということ。ぶれることなく進んでいることがお話から伝わってきました。たくさんの元気をいただきました。
川村さんのポジティブな発想が大ピンチをチャンスに変えたという印象を持ちました。専門家ではない素人だからこそ出来たというお話がとても興味深かったです。
高齢者や障害を抱える方にも仕事として物事に取り組んでもらうやり方は、今後日本中に拡まっていくように思いました。本人も周りも地域にも、皆一人ひとりが幸せを生み出す大きな力なんだと感じました。
「仁」の心に基づいて事業を行い、地域で生活している児童、障がい者、高齢者等の保健、医療、社会教育、福祉等の増進を図る活動を通して、一人ひとりが豊かに、輝きながら生活を営むことができるよう寄与することを目的とした特定非営利活動法人。
住所:〒979-1500 福島県浪江町大字幾世橋字一里檀137番地1
電話:0240-24-0833